がん医療は、負担の大きい生命や生活に関わる内容を含み、さらに複雑で多岐にわたっているため、専門性の高い人材を育成するだけでなく、育成された者が身につけた知識と技術をいかんなく発揮できるチーム医療の体制整備も必要となる。チーム医療の構成員である医師はリーダー的な役割を演じ、各職種において各自が習得してきた知識と技術を有機的に発揮させることが重要である。
がんを扱う学問である腫瘍学は以前からその必要性が叫ばれていたが、大学教育の中にはなかなか浸透してこなかった。
平成18年にがん対策基本法が成立し、それに伴い腫瘍学の教育体制の整備がすすめられ、平成19年より文部科学省から大学院を中心としたがん医療に関する教育に支援が開始された。
これに自治医科大学と国際医療福祉大学が連携し、がん医療に関係する多職種の教育を手掛けていく事業を開始するとともに、相互の大学にはない分野の連携を通じ補完し合うことで多職種専門職によるより高度なチーム医療のあるべき姿を模索している。
医師に対する教育はがん専門病院において以前から行われている経緯があり、今後の展開についてはおおよその方向性がつけられている。しかし、チーム医療の実質的担い手である看護師、薬剤師、放射線技師などに対する本格的な教育は開始となったばかりであり、実地医療への還元の妥当性や今後の方向性には従来の保守的な体制を含め検討課題は多い。
医師および看護師の教育は主に米国の腫瘍学教育の体制を踏襲している一方、薬剤師、放射線技師の腫瘍学教育については日本のがん治療の実態を反映しつつ各教育機関が模索しているのが現状である。また、米国では基本的な医療体制が日本と異なることもあって、米国の状況をそのままわが国に導入できない部分もある。
本国際セミナーにおいては、現在のわが国におけるがん医療の課題と今後の将来性を把握し、そしてこれまでの米国のがん医療の実践者育成や多職種協働体制の構築方法を参考にし、わが国にとって最適ながん医療の実施体制を築いていくことを目指します。 |